シノダ課長のごはん絵日記 (一般書) | ||||
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先日、都内のタクシー初乗り料金が、史上初!の値下げになることで審議が始まったことがニュースとなりました。
1.059キロメートルまで410円、その後は237メートルごとに80円加算、という内容です。
現在は2キロメートルまで730円、その後は280メートルごとに90円加算です。
値下げ後の料金で計算すると、2キロメートル乗車すると730円になる、というトリックみたいな数字です。
タクシーをほぼ毎日、1.5キロメートルくらい利用する人だと570円になり安くなりますが、3キロメートルくらい乗る人だと、現在1090円より値上がりして1140円になります。
初乗り料金をぐっと下げて、タクシー利用を増やそう、というのが狙いだということが、この料金比較でもわかります。
日本のタクシー料金が高いな、バスにしようか、と感じはじめたのは、いつ頃だったのでしょうか。
自慢にはなりませんが、わたしはタクシーを年間50万円くらい利用していた時期があります。2000年前後のインターネットバブルだったころで、それ以前から年間20万円くらいタクシーを利用していたので、タクシーに慣れていた、といえると思います。
その私が、15年くらい前から移動はバスを利用するようになりました。
理由は単純で、引っ越したら目の前にバス停があったから、です。
引っ越してからは目に見えてタクシー利用が減りました。
今では、深夜帰宅になりバスが使えないときぐらいしかタクシーに乗ることはありません。
でもね、引っ越しだけじゃないと思うのです、乗らなくなった理由。
そこで、タクシー初乗り料金の推移を調べました。
1979年から2015年までを追いかけています。
1979年のタクシー初乗り料金は380円でした。415メートルごとに70円アップするという計測です。
1985年のプラザ合意の前年、1984年に470円、株価が4万円に達しようかというバブル絶頂期の1990年が520円、銀行破たんなどがあった1997年が660円、リーマンショックの2008年が710円となっています。
660円時代が、1997年から2006年までの10年間続いています。
わたしの場合、2003年くらいには、タクシーよりバスに徐々にシフトしていった気がします。以前住んでいたところだと、新宿も渋谷も1000円前後でいくことができましたが、かかる時間に差がほとんどありませんでした。
ある日、このことに気づいてからバスを利用するようになりました。
待ち時間はありますが、急いでいなければバスから見える光景は新鮮でしたし。
それでは、サラリーマンのランチ代とタクシー初乗り料金とを比較してみましょう。
サラリーマンのランチ代金は、2002年に690円になって700円台を割り込んで以降、どんどん下降し、2007年から2014年まで500円台の時代にはいります。
2015年に600円台を回復しましたが、いつまで続くのでしょう。疑問です。
わたしの持論ですが、初乗り料金を安く設定して乗りやすくする、というのは戦略としてありだと、以前から思っていました。
というのも、サラリーマンのランチ代をみればわかる通りで、ランチより高いタクシーに乗りますか?という疑問があったためです。
おまけに、アジア各国では、空港から市内までタクシー利用すると、東京並みの料金になるところが多いのです(タイはほんとうに安いけど)。
これは、わたしの乗車時間での感覚値でしかありませんが、いずれも初乗り料金は200円~300円くらいです。
ランチ事情では、さらに詳しい調査結果がありました。
リクナビTech総研によるエンジニアのランチ代調査によると、平均は418円。
ランチは食べない、という人も多いようです。
この実態は、コンビニ弁当の価格にも現れていて、ワンコイン=500円以下は当たり前、最近では250円~280円の弁当さえあります。
大学生のランチを見ていても、男女問わず、300円以下というケースが多いです。
何を食べるかと言えば、菓子パンまたはおにぎり1個とスープまたはドリンクという組み合わせです。
つまり、食事代がかぎりなく低価格化していて、できるだけお金を使わない、というかんじなのです。
300円以下でランチを済ませる大学生がタクシーを使うでしょうか?
わたしが高校生だったころ(1970年代末)、駅から高校までは徒歩15分くらいかかりましたので、雨の日などはタクシーで高校まで行ったものです。もちろん定員ぎりぎりまで、誘い合っての乗車でしたが。
大学生のころ(1980年代前半)も、タクシーを利用することが少なくありませんでした。
いまほど地下鉄も整備されていなかったこともタクシーを利用した理由ですが、学生でも、気軽ではないにしろ、公共の交通機関としてタクシーは認知されていたように思います。
このころの感覚では、タクシー初乗り料金は、原宿で飲むコーヒー代と同じかちょっと高いくらい。
ランチはファストフードでも500円を超えましたので、そもそも外食は高い、という時代です。外食するときは大人と一緒に行っておごっていただく、という時代でもありました。
いいかえれば、1997年の金融破たん以降、外食の低価格化(デフレ)がすすみすぎて、タクシーの割高感がいっそう際立ってきた、ということではないでしょうか。
タクシー代だけインフレ傾向を示していますから。
視点をかえて、有効求人倍率とサラリーマンのランチ代を比較してみました。
リーマンショックの2008年以前、有効求人倍率は1を超えていましたが、下降しており、これとリンクするかのようにランチ代も下降しています。
2009年に有効求人倍率が0.45を記録した後は上昇に転じていますが、サラリーマンのランチ代は550円未満で横ばいです。
有効求人倍率が上昇しているとはいえ、2013年までは1未満ですから、心理的にはランチにお金をかける気分になれないのかもしれませんが、もうひとつ、理由があるように思います。
それは、ランチ代デフレがあたりまえになってしまって、600円、700円のランチに目が向かなくなっている、という可能性です。
と、同時に、あらゆるものが安くなってしまって、金銭感覚がワンコインのコストパフォーマンスを追求するようになっているのではないかと推測します。
たとえば、衣料品はユニクロの登場以前は、高価でした。
ところが今では、かなりのおしゃれさんでも、ユニクロ・GU・H&M・ZARAで購入していて、トータル1万円しない、という人が増えています。
靴やバッグ、アクセサリー類は、さすがにブランドものの高級品を身に着けている人でも、衣料品はシーズンごとに買い替え、トレンドっぽく見せるようになっています。
下のグラフは、ユニクロの店舗数とサラリーマンンのランチ代です。
ユニクロの店舗数は2004年に655店だったのが、翌2005年には1232店、2006年には1632店と一気に増加しています。
それまではユニクロで買い物をしなかった人たちが、2005年以降、ユニクロをよく目にするようになり衣料品の購入先にユニクロを選択しはじめたのがこのころでしょう。
衣料品は、個性を表現するためのものでもあって、ある意味、嗜好品です。
その嗜好品が安く手に入る時代になって、生活費であるランチ代はもっと安くてもいい、という気持ちになってもおかしくないと思うのです。だって、そこそこかっこいい衣料品が1000円、2000円で手に入るんですから。
衣料品は何度も着ますが、ランチは一回です。
ランチ代デフレを加速させた外的要因として、ユニクロをはじめとするファストファッションの影響は見逃せないです。
まとめると、
- タクシー初乗り料金がサラリーマンのランチ代を抜いてしまっているから、タクシーを利用しない人が増えた。
- サラリーマンのランチ代は2010年以降の有効求人倍率の回復とリンクしていない。ワンコイン時代が続いている。
- ファストファッションの登場で、ランチ代デフレは加速し、定着した。
ということでしょうか。
タクシー初乗り料金を下げることは歓迎です。
500円を割ってきたのも、かなりの英断だと思います。
ですが、バブル崩壊以降に生まれた、いわゆるゆとり世代の金銭感覚からすると、初乗り料金は250円くらいが適当だと思います。
サラリーマンの平均年収の下降と比較してみると、ランチ代の下降度合いははなはだしいものがあります。
実質賃金が下がっていることもあるし、消費税が1989年に3%で導入され、1997年に5%、2014年に8%と上昇ていることも、サラリーマン生活を脅かしていることは間違いありません。
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