【副島 隆彦】 マイナス金利「税」で凍りつく日本経済

 

前作「再発する世界連鎖暴落」で書かれていたことが、ほぼ的中していた副島先生が、今回はマイナス金利について解説しています。

まずは、本書のなかから、気になったところ、なるほど!と感じたところなどを紹介します。

 

マイナス金利とは新税のことである。

 

私は、NYダウも日経平均も、この後2年はこのまま「上げたり、下げたり」の乱高下でズルズル、だらだらと続いてゆく、と見ている。なぜなら、そのように為政者(権力者)たちが、異次元緩和やらマイナス金利やらを使って仕組むからだ。権力者たちにとっては、本音では景気回復などない方がいいし、このままのダラダラの株価低迷状態が続いてくれることが望ましい。

 

深尾光洋は、はっきり当時の研究レポートに書いている。「マイナス金利の実行とは、現金に近い資産(預貯金と日本国債)に、毎年2%ぐらいの税金をかけることである」と正直に書いている。タンス預金に対しても、新しい税金である「資産税」という財産税を掛けるという。その前に「新札切り替え」(新円切り替え。デノミネーション=通貨単位の変更)をやると考えている。

 

黒田の本当の狙いはフィナンシャル・リプレッション(金融抑圧)だ。

 

金融抑圧」というのは、政府(国家)による統制経済のことである。(中略)「金融抑圧」は、他に買うものがなく、国債を買うしかなくなった先進国の金満国家の資産家や銀行が、市場参加者となって現れ、借金だらけの国家財政を補填するしかないように逃げ道を塞がれて、国債を買うべく追い立てられていった実情(プロセス)を説明している。

 

ブレトンウッズ体制(1944~71年)の形成期において、金融抑圧を容易にしたのは、国内規制や金融規制がはびこる戦後(の特殊な)事情だった。実際には29年~31年の世界大恐慌を受け、金乳市場は第2次大戦より前に、すでに自由放任から規制強化の方向へと転じていた。そうではあるが、やはり戦後のブレトンウッズ体制は、巨額の政府債務負担を減らす意図があって設計された、と考えざるを得ない。

 

こうした歴史上の過去の事例をもとに、政府の債務削減を促すという視点から、金融抑圧を「成功」させる条件を読み取ることができる。第一には、国債の囚われの市場参加者(金持ち、富裕層)を多数創出・維持すること。第二には、マイナス実質金利を継続して、これら投資家に事実上の「税」を一貫して課すことである。

 

マイナス金利という冷凍氷漬け戦略は、確実にアメリカにまで広がる。アメリカだけが、覇権国(世界支配者)であることの腕力、脅迫力にものを言わせて“利上げ”ができて、デフレからの脱却でいち早く成長戦略(景気回復)を達成しようとするのを、「そうはさせないぞ」と引きずり下ろす力を秘めている。

 

日銀黒田の狙いは、何が何でも国債(国家の借金証書)のデフォールト(破綻)を阻止する、ということですね。国債の暴落(国家信用の崩壊。金利の急上昇)さえ防げれば、あとのことはどうなってもいい、ということです。つまり大不況(デフレ)はこのまま続く。続いていい、ということですね。国民がどんなに困ろうが我慢せよ、ですね。

 

どうも650兆円を財務省が今も隠している。「今すぐ使えるお金が600兆円ある」と高橋洋一がずっと言っていました。(中略)10年前に日本医師会の年金の専門家が調べて書いていたのを私は鋭く見つけました。(中略)公務員のお金を隠してある。(中略)この650兆円は日銀の資金循環(表)にも出てこない。簿外で運用しているはずです。公務員のお金の本体はきっちり安全にやっていますよ。なぜなら官僚(上級公務員)たちにとっては、自分の手兵のかわいい古文立ちの、本当の老後の食い扶持ですから。だからGPIFを決して株式会社にはしないのです。

 

ゴールドマン・サックスや野村證券が規模を縮小したあとのプライム・ブローカー業務に中国系が入ろうとしています。シンガポールの華僑系銀行で、最大手のオーバーシー・チャイニーズ・バンキング・コーポレーション(OCBC)が東京市場でプライム・ブローカーをやろうとしている。(中略)株価が下がったところで、その企業を銀行本体が買収するスキーム(計画)です。日本人同士には殴り合いをさせて、株価が下げたところで、銀行本体が日本の企業なり銀行なりを安値で「爆買い」するというやり方でしょう。

 

例えば、地銀が国債を20兆円運用していますという時に、地銀が日銀に借り換えをするわけです。「今持っている分を売って新しい国債を買う」借り換えで、国債のポートフォリオを維持してきました。ところがマイナス金利にまでなっている新しい国債は「もういらない。資金を株に入れる、あるいは米国債に投資します」となるかもしれない。日銀に借り換え用の国債ではなくて、「現金で返してくれ」といった時に、お金が本当に市中に出回るようになります。

この時、国際需要が減ることで価格は下がり、すなわち金利が高騰する。それが国債の暴落です。

 

カダフィ殺しの最高責任者(司令塔)はヒラリー・クリントンである。リビアのカダフィを殺してはいけなかったのだ。カダフィは今のIS「イスラム国」のような裏のある、奇怪なイスラム原理主義の過激派を抑えつけて、なんとか北アフリカによる平和と秩序を保っていたのである。「カダフィを殺してしまったので、”お化け”のような連中がどんどん出て来た。もうアメリカは、中東アラブ世界に関わってはいけない」という健全な反省が、アメリカ国内に生まれた。

 

アメリカの”草の根(grass roots)”というのは、決してリベラル派や貧しい人々の運動のことではない。アメリカの地元に住む、白人の保守的な農場主(ファーマー)や中小企業経営者や商店主や自営業者たちのことだ。彼らから沸き起こり、ワシントン政治を突き上げてゆく怒りの嵐のことをポピュリズムと言うのである。

 

トランプを支持している、アメリカのアイソレーショニズム(外国に関わらない主義。国内優先主義)の中年男性たちが、「ヒラリーは次の戦争を始める準備に入っている」と感じている。私が教えを乞うて来た本物のアメリカ白人男たちは、開拓民の魂を受け継ぐ、独立自尊を大切にするリバータリアン Libertaruan でもある。

 

長くなってしまいましたが、本書を読んで思い起こしたのは、イアン・ブレマーの「「Gゼロ」後の世界―主導国なき時代の勝者はだれか」と小池ノクトのコミック「6000 ロクセン」、そして今、読んでいる途中のエマニュエル・トッドの「シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧」です。

 

イアン・ブレマーはアメリカ人、エマニュエル・トッドはフランス人です。

国は違えど、副島先生とこのふたりの主張は、奇妙なほど似ていて、そして関連しているのです。

 

中国の台頭によって世界経済は大きく変化しています。

本書の指摘にあるように、アメリカは中国との対立を深め、アジア地域で戦争(または紛争)を起こそうとしているのかもしれません。日本はアメリカと同一視されていますが、中国が日本の、それも中小企業の持っている技術力や特許技術を狙っていることは間違いなく、日本企業が中国企業の「下請け」となる未来が、容易に予想できます。

 

これを描いているのが小池ノクトのコミック「6000 ロクセン」です。

詳しくはかきませんが、管理会社は中国企業、設備をつくり運用するのは日本企業、という設定です。

 

いまはまだ、アメリカ企業、ヨーロッパ企業、日本企業、中国企業の4つどもえで、新興国にインフラ売り込み攻勢をかけています。

しかし、近い将来には、日本企業が中国企業の傘下に入るのではないか、と私は予測します。

つまり、日本企業はプライドよりも実(売上)を重視すると思われるからです。

 

いままでもアメリカ傘下でしたが、下請けにしようという発想が欧米にはないからかもしれませんが、企業同士の競争は自由でした。中国相手だと、こうはいかないでしょう。

 

今回の副島先生は、庶民目線での資産防衛策を提示してくれていません。

それだけ、事が深刻なのかもしれません。

 

本書には9月18日に開催予定の「副島隆彦の”予言者”セミナー」の申込がついています。

もっと知りたいかたは、本書をお読みになるほか、セミナーにも参加されたほうが良いと思います。

 

最後に、大学で指導いただいたイギリス史の教授がおっしゃっていました。

「イギリスがついたほうが勝つ。いままでの歴史が証明している。」

「戦争は(アメリカ)民主党政権がはじめる。」

 

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